土地の近くに送電線の鉄塔があると、心理的な不快感や電波障害、健康被害が懸念されます。加えて建物の建築制限を受けるときは、相続財産の評価上、土地の評価額を減額することができます。
送電線による建築制限
電力会社が送電線を架設するとき、土地の上空に電線を設置し、鉄塔の土台として土地を使用するため、土地所有者との契約により、その土地(承役地)には区分地上権に準ずる地役権が設定されます。
特別高圧架空電線の場合、建造物の建築制限を受けます。電圧の大きさと架空電線の種類に応じ、送電線から一定の距離(離隔距離といいます)を取り、および送電線の直下から水平距離で3m以上、建造物の屋根や壁を離すことが求められます。
土地評価の減額割合
送電線が土地の上空を利用している場合、その利用制限を受けている土地について、次の割合まで評価額が減額されます。
建物の建築が全くできない場合 | 50%又は借地権割合のいずれか大きい割合 |
建物の構造、用途等に制限を受ける場合 | 30% |
送電線の調査方法
まず現地で送電線の架設状態を確認します。送電線を支える鉄塔の場所、送電線の位置、建物との距離関係を目視します。次に、住宅地図で送電線の線路を確認して全体の位置関係を把握します。公図を見ると、鉄塔部分の敷地や電線下側の土地が分筆されている場合もあります。
電力会社と土地所有者との間で締結した土地利用に係る契約書には、建物の建築制限の内容が記載されています。不明であれば、電力会社に問い合わせて現地の地番を伝えれば、制限内容を教えてもらうことができます。また鉄塔に設置された銘板には、送電線の名称や番号が記載されており、これも手掛かりとなります。
図面で制限範囲を特定する
電力会社との土地利用に係る契約書には、土地や建物が利用制限を受ける面積と併せ、制限箇所が図示されていますので、土地の測量図と併せて減額する土地の範囲を特定することができます。
マンションの場合は、電力会社と管理組合との間で土地利用に係る契約をしていますので、売買契約書や重要事項説明書で制限内容を確認します。