労働審判制度の概要
時代の変化とともに、労働者の権利意識も高まりを見せ、会社に対し自らの権利を主張する労働者が増えました。これにより、労働者と事業主の間における、労働条件や職場環境に関するトラブル(個別労働紛争)が増加しています。これらの争いは原則として裁判で争われるわけですが、通常の裁判では解決に長期間を要することも多いことから、「個別労働紛争の迅速な解決」と言う観点で、行政機関及び司法機関である裁判所の双方に、個別労働紛争解決制度が設けられました。その裁判所側での制度が「労働審判制度」になります。
労働審判制度の特徴
労働審判制度では、「迅速な解決」の観点から、原則として3回以内の期日で審理を終結させなければならないとされています。
また、実情に応じ労使双方を代表する労働審判員と裁判官で構成する労働審判委員会が手続きを行うことになり、労使の実情に詳しい専門家による審判になることで、実務の感覚が反映したものとして評価されています。なお、少し専門的な内容になりますが、労働審判制度には、「調停」が手続きの中に組み込まれています。通常の裁判のように白黒をハッキリさせることよりも、調停の成立が見込まれる場合にはそれを強く試みることが、手続きの中で求められています。実際、労働審判の中で調停が成立する比率は一貫して7割程度で推移しています。さらに、調停が成立しないで審判をする場合にも、「当事者間の権利関係を踏まえつつ、事案の実情に即した解決をするために必要な審判」がされることとなり、ここでも通常の裁判と比べて、穏便な解決を指向していることがわかります。
労働審判に掛かる手数料
労働審判を申し立てする際には、裁判所に納付する手数料(印紙代)が掛かります。これは、原則無料である行政機関での個別労働紛争解決制度と異なる点です。具体的な金額は、請求金額により異なり請求金額が高くなるほど手数料も上がります。その他、相手方を呼び出すための郵便切手代を納付する必要がありますし、また、弁護士を代理人とする場合には、別途弁護士費用が必要になります。