執行役員制度の役割と法制度との関係
最近は、中小企業においても、執行役員制度の導入を検討する事例が増えています。執行役員制度では、取締役会が経営の意思決定権及び業務執行に関する監督権を有し、代表取締役が業務執行を行い、執行役員が代表取締役を補佐し、一定の職務権限を与えられ、その範囲内で業務の執行を行います。
執行役員は会社法上の機関ではないので、選任期間については、株主総会ではなく、通常は取締役会となっています。一般的には①取締役兼務型、②委任契約型、③雇用契約型などにより、会社との契約関係を成立させ、運営されていますが、③雇用契約型が多そうです。
法人税法上の役員と執行役員
法人税法上の役員に対する報酬では、過大役員報酬部分や役員賞与について損金不算入の制約を受けます。そこで、執行役員が法人税法上の役員に該当するかどうかが検討課題になります。法人税法では、役員の範囲を明確にしており、次に掲げる者を役員として定義しています。
①取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人
②その会社の経営に従事している者のうち使用人身分以外の者
執行役員は法的制限なく任意に設置できる役職であるため、会社法上の取締役等には該当しません。したがって、役員という名称であっても、①の役員の範囲には含まれません。また②は、いわゆる法人税法上のみなし役員ですが、みなし役員に該当しない執行役員は、業務執行の意思決定権を持たず、代表取締役の指揮・監督の下で業務執行を担当しているに過ぎませんので、報酬については使用人と同様の取扱いとなります。
就任での打切支給
なお、このような身分的取扱いの対象となる執行役員に就任した者に対して、その就任前の勤続期間に係る退職手当等として打切支給する一時金は、原則として、給与所得(賞与)として取り扱われます。要注意です。
執行役員と会社との契約関係が雇用契約の場合、執行役員就任後も契約関係には変動がなく、労働法上の労働者に該当することに変わりはなく、労働者としての保護を受けることから、雇用関係に重大な変動があったとは認められないためです。