記事投稿日:2020.06.18
二つの差異
損益計算書とキャッシュ・フロー計算書はどちらも企業活動に関する情報を提供する財務諸表の一部ですが、両者にはしばしば乖離が見られ、損益計算書上は利益が出ているにもかかわらず、キャッシュ・フロー計算書上では資金が足らないという状況が起こることもあります。
その原因は、会計上の用語になりますが損益計算書は「発生主義」で作られており、実際に収益が現金化される、又は費用が現金で支払われるまでに一定期間のずれがあるためです。この期間のずれによって、一方には反映されているが他方には反映されていない情報が両者の違いを生んでいます。
現金化されるまでの期間の影響
損益計算書の収益が現金預金になるまでは売掛金や受取手形に形を変えながら通常は数か月かかります。費用は給与のように当月末に支払われるものもあれば減価償却費のように購入時の支払から数年、数十年を経てから費用として認識されるものもあります。数年から数十年の期間を取って両者を比べれば、期間のずれが収まって乖離は小さくなりますが、四半期毎や1年毎に見た場合には上記のような長期に比べて乖離の幅は大きくなります。
財務分析上の手法
金融機関やM&Aの現場では両者を比較することでより詳細な財務分析を行ったりするそうです。また対象となる会社がキャッシュ・フロー計算書を作成していない場合に、損益計算書の税引後純損益に法人税等と減価償却費を足し直すことで上記の長期にわたるずれを解消し、簡便的に純キャッシュ・フローを算出することも行われています。つまり法人税は通常翌年に支払われ、減価償却費は支払が済んだ後も長期にわたって発生するためです。
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