記事投稿日:2020.01.17
国際的な租税回避・脱税への対応
令和2年の税制改正では、外国子会社配当の益金不算入制度と子会社株式の譲渡を組み合わせた税務上の譲渡損失(赤字)を創出する租税回避に対し、規制を加える改正が盛り込まれました。
新聞報道等によれば、ソフトバンクグループ(SBG社)が2016年に3.3兆円で買収した英半導体開発大手アームHD社との取引を念頭においたものとされています。
(2018年3月期のSBG社の取引)
①外国子会社配当の益金不算入 | SBGが、アームHDより子会社株式アーム・リミテッド(中核事業)の75%配当で受領 |
②外国子会社株式の譲渡損 | 価値が下落したアームHD株の8割弱をSBG傘下のファンドに売却(売却損2億円超) |
外国子会社配当の益金不算入制度とは、日本親会社が外国子会社から受ける配当は、その配当の95%が益金不算入とされるというもの。国税庁は、個々の取引自体は合法としながらも、連結決算で1兆円の利益を出した同社の法人税がゼロとなったこのスキームを過度の節税策ととらえ、同様の取引を封じる改正が行われました。
具体的には、法人が、特定関係子法人から受ける配当等の額(対象配当金額)が株式等の帳簿価額の10%相当額を超える場合には、その対象配当金額のうち益金不算入相当額を、その株式等の帳簿価額から引き下げることとされます。
この改正による簿価引下げにより、簿価と売却額の差がなくなり、意図的な赤字を作り出すことはできづらくなりました。
外国子会社合算税制の見直し
内国法人等の外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)について、部分合算課税制度の対象となる受取利子等の額の範囲から、本店所在地国における棚卸資産の販売から生ずるユーザンス金利は除外されます。
外国税額控除・過大支払利子税制の改正
日本で所得と認識されない金額に対して課されるものとして外国税額控除の対象から除外される外国法人税の額に、一定のものが追加されます。また、過大支払利子税制の対象外支払利子等の範囲についても見直しが行われています。
掲載日時点の法令等に基づいて記載しており、最新の制度と異なる場合があります。