BEPS(税源浸食と利益移転)対応計画
OECDは、多国籍企業が各国の税制や国際課税ルールとの間のずれを利用し、その課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)=税源浸食と利益移転)に対処するため、2012年にBEPSプロジェクトを立ち上げました。
BEPSプロジェクトでは、 G20の要請により策定された15項目の「BEPS行動計画」に沿って、国際的に協調してBEPSに有効に対処していくための対応策について議論が行われ、2015年9月に「最終報告書」がとりまとめられました。
時間をかけずに効果的に対策を進める方法
BEPS行動計画15の多数国間協定の策定により、世界で約3,000本以上ある二国間租税条約にBEPS対抗措置を効率的に反映させるための多数国間協定がBEPS防止措置実施条約です。これにより、相対での改正の手続きを経ることなしに、多数の既存の租税条約について同時かつ効率的にBEPS防止措置を実施することが可能となります。
本来租税条約は国対国(又は地域)との条約であり、内容の改正や適用に際しては個別に改正が行われて発効するものです。しかしながら、原則に従っていては迅速な対応ができません。そこでBEPSプロジェクト参加国が租税条約に関連するBEPS防止措置を多数の既存の租税条約について同時かつ効率的に実施することが可能となるBEPS防止措置実施条約が策定されました。
この条約の各締約国は、既存の租税条約のいずれを本条約の適用対象とするかを任意に選択することができ、また、この条約に規定する租税条約に関連するBEPS防止措置の規定のいずれを既存の租税条約について適用するかを所定の制限の下で選択することができます。
わが国も2018年9月26日受諾書を寄託しました。本条約は、わが国について2019年1月1日に発効していています。
既存の租税条約に導入のBEPS防止措置
①租税条約の濫用等を通じた租税回避行為の防止に関する措置、及び、②二重課税の排除等納税者にとっての不確実性排除に関する措置から構成され、具体的には、いくつかの行動計画に関する最終報告書が勧告する租税条約に関連するBEPS防止措置が含まれています。これにより、租税条約の読み方がさらに複雑となりました。