「調査」についての異なる規定
国税通則法の規定の中には、「調査」と「調査(実地の調査に限る)」との異なる表記の条項があります。
この二つの表記から、当然に、実地の調査以外の調査というものがある、ということが理解できます。
「調査(実地の調査に限る)」以外の「調査」とは、どういうものなのでしょうか。
「調査」による減額や繰戻還付
既に行った申告について、納付すべき税額が多すぎた場合、申告書に記載した翌期へ繰り越す欠損金が少なすぎた場合、申告書に記載した還付税額が少なすぎた場合などでは、税務署長は減額更正をします。
税務署長に減額更正を納税者側から請求することもできます。
また、所得が赤字だった時の、その前の期間への赤字の繰り戻し請求という制度もあります。
これらの減額更正や還付処理をする場合には、税務署長は「調査し、その調査したところにより」、行うことになっています。
これらの場合の「調査」は実地の調査でないことが多いので、机上調査・書面調査とか電話確認調査とかの意味の「調査」なんだな、と理解されるところです。
「調査」のその他のケース
また、納税者本人に対する調査ではあるが、取引先や銀行という第三者に対してウラをとりに行くような反面調査というものもあります。
同じく第三者からの資料収集としては、「法定調書」の提出や「資料せん」の提供依頼もあります。
見方によると、これらも広い意味での調査なのかもしれません。
日本版のJohn Doe Summons
日本では今、税制調査会で、ICT技術の発展等により仮想通貨やシェアリングエコノミーなどでは、取引仲介者やインターネット広告代理店などに利用者情報を提供させる随時の制度として、旧来の法定調書とは異なるものが必要との議論をし、国税当局は制度創設の検討を進めているようです。
従来の「売上、仕入、費用及びリベート等に関する資料せん」の提供依頼の任意性を超えた、法的根拠をもった資料収集の制度化のようで、その参考事例とされているのが、アメリカのジョン・ドゥ・サモンズ(John Doe Summons)という制度です。