減価償却とは
事業に使う固定資産を購入し、それが1年を超えて使われる場合には、一時の費用とはせず、見積り使用可能期間にわたって経費配分することを減価償却と言います。
これだと何だかよくわかりません。意味や目的を専門書等の解説で見ましょう。
(1)会計学の教科書では
「有形固定資産は、①使用または時の経過による原因(主として物理的原因)のほか、②機能的原因(技術の進歩や発明などによる陳腐化および生産方式の変化や産業構造の変化による不適応化)によって、その経済的便益が徐々に低下する。減価償却は、このような減価を認識するため、有形固定資産の取得原価を、その耐用期間にわたって、一定の規則的な方法により配分する会計手続きである。」と説明しています。(出典:新井清光・川村義則『新版現代会計学』中央経済社、2014年、97頁)。
専門用語が並ぶと難解です。もう少ししっくりと腹に落ちる説明を探してみます。
(2)経済学の一般向けの書物では
「減価償却とは何か。企業が持つ資本設備は減耗する(くたびれる)。すなわち、企業の固定資産(機械や家屋など)は、時間が経つと、仕様の旧式化や消耗損傷などにより価値を減ずる。この減価(価値を減ずること)を使用各年(度)に割り当てて、新固定資産に替えるために備える。そのための会計手続き(記帳計算上の手続き)。これを減価償却という。」(出典:小室直樹『経済学のエッセンス-日本経済破局の論理』、講談社+α文庫、2004年、178頁)。下線筆者。
利益を出すための任意償却下での過少計上
話は更に続きます。「あなたが経営者なら、減価償却を忘れたら一大事です。会社は枯死するかもしれない。」(同178頁)。(著者が減価償却を知らなかった当時の中国政府に招待された際のコメントで)「利潤でないものを『利潤』だと誤認した。これが問題なのだ、と」(同180頁)。「日本でも高度経済成長時代以前には『儲かった、儲かった』とはしゃいでいるうちに倒産した」(同181頁)。
決算が赤字の場合に、法人税法では減価償却の計上が任意であることを利用して、償却費を計上しないで赤字を小さく見せる(もしくは黒字を大きく見せる)ことはよくあります。こうした時こそ、減価償却の意味を思い出して、頑張って社長自身が会社の真の姿を見る勇気が必要です。