タックスヘイブン経由は悪事がバレない?
有価証券報告書虚偽記載事件のゴーン会長の海外高級住宅は、海外子会社がタックスヘイブン(租税回避地)の会社に投資資金を移し、物件購入などにあてていたようです。(2018/11/22日本経済新聞電子版)。
悪事が発覚すると実はここが使われていたと顔を出すタックスヘイブンですが、なぜ「情報交換協定(租税に関する情報交換を主たる内容とする協定)」を結んでいても脱税情報が表に出てこないのでしょうか?
バージン諸島との情報交換協定
今回の構図は、日本から約60億円の出資でオランダに子会社を作り、そこからタックスヘイブンである英領バージン諸島に孫会社を作り、ブラジルやレバノンで物件を買っていました。バージン諸島とは2014年に情報交換協定が締結されています。
租税条約に基づく情報交換には、「要請に基づく情報交換」「自発的情報交換」「自動的情報交換」の3つの類型があります。このうち、海外資産にかかる透明性を高めるための情報交換は、非居住者への支払い等についての情報の「自動的情報交換」です。今回の場合、金融資産ではない住宅であったこと、および間にオランダ子会社を挟んでいたこともあり、紐づけされず、資産も把握されていなかったものと推測されます。
そもそもタックスヘイブン対策税制とは
タックスヘイブン対策税制とは、海外の軽課税国・地域に利益を溜めておくと日本の所得に合算して課税するという制度です。日本での課税を回避するために儲けをタックスヘイブンに置くと課税されます。
儲けが出ない住宅を買って保有していてもタックスヘイブン対策税制での課税はされません。今回の事件で課税されるとしたら役員への経済的利益の供与であり、タックスヘイブン対策税制ではありません。
悪者はタックスヘイブンではなく利用者
タックスヘイブンとなっている国や地域は特定の産業もないため、軽課税とすることで会社をたくさん集め、年次会計登録料で歳入を上げています。存在を否定するのは簡単ですが、失くせない現実もあります。
悪いのは悪用する利用者ですが、ICT(情報通信技術)の発達で情報を集め紐づけ、各国が課税していくという環境が整うのを待つことになります。そうした環境は整いつつありますが、やはり現実的には何かの事件が発覚してそこから芋づる式というのがまだまだ実態なのかもしれません。