何故10万円の引き下げか
平成30年の税制改正で給与所得控除と公的年金控除の額がそれぞれに一律10万円引き下げられました(代わりに基礎控除が10万円引き上げられました)。
平成26年12月の日本税理士会連合会の税制審議会の答申では、給与所得控除と公的年金控除は多すぎると答申しています。
理由は所得計算と所得控除の趣旨を明確にすべきということによっています。
所得税の計算方法
所得税を計算する手順は以下となります。
①各種所得の金額を計算します
収入の種類により現在は次の8つに分類して所得金額を計算します。
利子・配当・給与・不動産・事業・山林・譲渡・雑収入です。内容は多々ありますが計算の原則は(収入金額)-(必要経費)=所得金額です。
②所得控除を差し引きます
社会保険料や医療費等、支払った経費の他、扶養控除・配偶者控除・基礎控除などの最低の生活を保障するための控除があります。
③所得金額から所得控除を差し引いて課税所得金額を算出し、これに税率を掛けて税額を算出します
④その後住宅取得控除や配当控除等の政策的な税額控除を引いて納税額が確定します。
日本的配慮か?
給与所得控除と公的年金控除は①の所得金額の計算での必要経費に相当するものです。給与所得者は給与という収入を得るために掛かる経費は概ねその企業が負担しているのが現状で、ほとんどないのではないか、更に公的年金の必要経費である掛金は既に社会保険料控除で控除されているのではないか、給与所得控除と公的年金控除には、必要経費以上の生活保障という観点からの配慮があるのではないか、生活保障を云々するのであれば、②の所得控除で行うのが筋ではないか、というのが、多すぎるという答申の趣旨です。
課税の公平という観点からすると、①の他の収入の所得計算から控除できる必要経費はほとんど支出したものに限られます。
現在の社会において労働の対価はほとんど給与所得です。公的年金も給与所得の延長にあります。2つの控除の由来は労働の対価を尊重する日本独特の配慮のようです。