記事投稿日:2018.03.22
所得税法の「生活に通常必要でない資産」
所得税の世界で、対応するのが厄介な案件の一つに「生活に通常必要でない資産」というものがあります。
「生活に通常必要でない資産」とは所得税法上、次の資産とされています。
1 | 競走馬その他射こう的行為の手段となる動産 |
2 | 主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産(別荘など)・不動産以外の資産(ゴルフ会員権など) |
3 | 生活の用に供する動産で1個・1組の時価が30万円をこえる貴金属・書画・骨とう等 |
この「生活に通常必要でない資産」について生じた損失は、以下のように取扱われています。
損益通算 | できない |
雑損控除 | できない |
災害・盗難・横領による損失 | 損失年分とその翌年分の譲渡所得から控除 |
会社員の通勤カーは「生活に通常必要か」
「生活に通常必要でない資産」について有名な裁判があります。あるサラリーマンが自家用車の運転中に自損事故を起こし、修理代もかかることから車はスクラップ業者にそのまま3,000円で売却。その未償却残高300,000円を控除した297,000円を譲渡損失として給与所得と損益通算して還付申告を行ったところ、税務署側に否認されたものです。これは裁判で争われ、第一審では、通勤・会社業務でも使用していた実態や走行距離がレジャーのみで使用した場合を上回っていたこと、大衆車であったことが考慮され「生活に必要な資産」として、譲渡損失の損益通算を認めました。
「給与所得者所有の有形固定資産」の立場
上告審では、これが「生活に通常必要でない資産」に当たるとして、損益通算が認められませんでした。車の使用範囲がレジャーの他、通勤や勤務先における業務に及んでいるのは認めた上で、通勤・業務での使用は、雇用契約の性質上、使用者の負担においてなされるべき話で、電車通勤できるのだから通勤で車を使う必要性がない―という判断でした。つまり「通常性」と「必要性」のうち、第一審は前者が、上告審は後者が重視されたということなのですが、地域の特殊性なども考慮する必要があるのではという意見もあります。
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