記事投稿日:2017.12.06
スタンスが「原則損金不算入」に変わった?
税理士は、役員給与について、「規定では、原則損金不算入です」と説明します。ただ、「気持ちは原則損金算入です」と感じている方も多いのではないでしょうか。この経緯については、平成18年度の税制改正の話まで遡らなければなりません。
平成18年前の法人税の規定は、役員給与を報酬(定期の給与)と賞与(臨時的な給与)に分けた上で、報酬を「原則損金算入」とすることを前提に、賞与・過大な報酬を「損金不算入」とするとされていました。
旧34条 | 過大な役員報酬の損金不算入 |
旧35条 | 役員賞与の損金不算入 |
平成18年に会社法が施行され、役員給与に概念が一括りにされたため、法人税法も改正されました。旧35条は廃止し、34条の条文見出しが「役員給与の損金不算入」とされ、次のような内容となりました。
34条1項 | 役員給与の損金不算入
(例外:定期同額給与などは損金算入) |
34条2項 | (過大な役員給与の損金不算入) |
財務省「原則損金不算入と考えない」?
この条文見出しやこれまでの報酬が例外的扱いとなる書きぶりは、インパクトがありました。これについて、当時の財務省の担当者は次のようにコメントしています。
「(役員給与が原則損金不算入となったという指摘があるが)法人税法の構造として22条の別段の定めを規定しようとする場合には、このような見出しや構成内容にならざるを得ないものであって、そもそも役員給与を原則損金不算入と考えるといったことではない」 |
22条(公正会計処理基準)は、一般に公正妥当と認められた会計基準に従うというもの。法人税法の「原則」です。これに当たらないものが「別段の定め」(例外)。
このような法人税の構造上、役員給与は公正な会計基準に基づけば「原則」(損金算入)で、34条は「例外」(損金不算入)という形をとらざるを得ない―単なる立法技術上のお話ですということなのです。
モノの言い方の問題ではありますが…
この「原則不算入」と読める条文に、現在でも「違法とは言わないが、立法作法として如何なものか?」という意見は根強くあります。日税連でも、役員給与は原則として損金に算入できるものとして、損金不算入とされるものを包括的・限定的に法令に規定すべきと要望しています。
掲載日時点の法令等に基づいて記載しており、最新の制度と異なる場合があります。