同族会社規定を非同族会社にも適用
昭和40年12月15日の東京地裁判決は、法人税の負担の不当減少と認められるか否かは、「当該行為計算が経済人の行為として不合理、不自然のものと認められるかどうかを基準としてこれを判定すべきものであり、同族会社であるからといって、この基準を越えて広く否認が許されると解すべきでないと同時に、非同族会社についても、右基準に該当するかぎり否認が許されるものと解すべきである」、としています。
その後、類似の判決はあったようですが、当時は、同族会社行為計算否認規定は創設規定ではなく確認規定と解する考え方があったため、非同族会社に対しても、このような文理無視解釈の判決が行われました。
今では、組織再編や連結納税での行為計算否認規定が創設されているので、確認規定説を唱え得る環境ではなくなっています。
行為計算否認の先に逋脱がある
昭和33年5月29日の最高裁判決に係わる争訟は、地裁・高裁・最高裁のすべてで納税者勝訴だったものですが、その最高裁に芝税務署長が提出した上告理由書は、次のように述べています。
・・・・同族会社の行為計算否認の規定は、否認される行為計算が合理的であるか否かに関するのではなく、徴税官庁の関心の対象となるのは、逋脱があるか否かの点であって、会社の行為計算自体が果して経済的に見て合理的であるかどうかは、徴税官庁の干渉すべき限りでない。・・・・
戦後初期の時代を反映してか、行為計算否認の対象は逋脱の有無としており、適法で税法違反がなくても、刑事法規・偽り不正条規に触れるとの認識が表現されています。最近露骨にいう人はいませんが。
今でも言っている人はいます
上記の上告理由書は、昭和25年の法人税法改正で、行為計算否認規定の文言が変わり「逋脱」の文言が消えたけれど、改正前後の主旨目的は同じといい、税務大学校の論文集「税大論叢」などを見ていると今でも、「同族会社の行為計算の否認規定を適用した場合に逋脱犯の成立を一切否定するのであれば疑問である」と言っている人がいます。
逋脱や偽り不正行為は、共謀罪に直結する概念なので、適法行為計算との回路があるのは、怖いことです。