早い者勝ちの節税戦略
国内・国際を問わず租税戦略計画(タックス・プランニング)は、いかに、合法的な範囲内で税法の隙間を見つけ、租税負担を少なくするかの頭脳勝負ともいえます。対戦するのは、納税者(+アドバイザーの税務専門家)と税務当局(=現行税法)です。
先に税法の隙を見つけた者が合法的に節税し、それに対して後から国税側が税制改正で蓋をするという鼬ごっこです。典型的な例が、相続税法における贈与税の納税義務者の定義から外れるような(税法の)想定外の動きをして、約1,330億円の贈与税を回避し、最終的に最高裁で課税されないとの判決を受け、400億円の還付加算金まで受けた武富士贈与税事件です。
行動計画12:義務的開示制度
OECD(経済協力開発機構)のBEPS(Base Erosion and Profit Shifting=税源浸食と利益移転)プロジェクトの行動計画12は、租税回避を抑制するとともに出現した租税回避スキームに速やかに対処するため、プロモーター(=節税アドバイスをする専門家のこと)及び利用者が租税回避スキームを税務当局に報告する制度(義務的開示制度)の策定について検討しています。これって、平たく言うと、節税戦略の手の内を明かせということです。練りに練った租税戦略を開示すると、税法改正で蓋をされるまでの時間が短くなります。プロモーターの商売あがったりです。
企業への影響と経済界の意見、実現可能性
日本の経済界は、「一部の多国籍企業によるアグレッシブ・タックスプランニング(ATP)を抑止し、税源侵食の防止、及び平等な競争条件の確保を図るとの行動12の趣旨は理解できる。BEPSを推進するプロモーター、それらスキームを利用・開発する濫用的納税者は厳しく取り締るべきである。」と評価しながらも、事務負担増の観点から消極的な意見を出しています。
国際租税戦略計画に詳しい税理士に聞いたところ、その人は税制調査会委員の某大学教授から「おそらく日本の経済界が反対して難しいだろう」という話を直接聞いたことがあると教えてくれました。また彼自身の見解でも、報告に際しての事務負担(納税者側かプロモーターかの問題を含む)の観点から、国内税法で近々に義務化されることには疑問を持っているようでした。