BEPSプロジェクトとは
多国籍企業が、様々な国際税務計画(タックス・プランニング)の手法を駆使し、その課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題をBEPS(Base Erosion and Profit Shifting=税源浸食と利益移転)といいます。OECD(経済協力開発機構)は、この問題に対処するため、2012年(平成24年)にBEPSプロジェクトを立ち上げました。
2013年(平成25年)7月に15項目のBEPS行動計画(アクションプラン)が公表されました。その後、各行動計画に対する議論に資するためディスカッションドラフトが公表され、パブリックコメントおよびパブリックコンサルテーションを経て、第一次提言が公表され、さらにその後、更なる検討が必要とされた事項について、フォローアップ作業が行われ、2015年(平成27年)10月5日に最終報告書がまとめられました。
それらによって提言される国際ルールに従うように、国内法や租税条約の改正・見直しが各国に勧告されています。
行動計画6:租税条約濫用への対処
BEPSの行動計画は15ありますが、条約漁り(第三国の居住者が不当に条約の特典を得ようとする行為)をはじめとした租税条約の濫用を防止するため、OECDモデル租税条約の改定及び国内法の設計を検討するのが、行動計画6:租税条約の濫用防止です。
租税条約の特典を受けるに際しては、濫用防止のために、真にその条約締結相手先国の居住者であるという証明書や書類の提出が必要です。これを特典条項といいますが、これは2004年(平成16年)の新日米租税条約から設けられています。今回はさらに、租税条約の濫用を防止するための租税条約上での最低限必要な措置(ミニマムスタンダード)として、①租税条約のタイトル・前文に、租税条約が、租税回避・脱税(濫用を含む)を通じた二重非課税又は税負担の軽減の機会を創出することを意図したものでないことを明記すること、②租税条約に、一般乱用防止規定を規定すること等が勧告されています。
行動計画6の貴社への影響
外国会社との取引で利子・配当・使用料等に関して租税条約による減免を受ける場合には、「租税条約に関する届出書」を提出しなければなりません。今後、租税条約の改定が行われれば、提出すべき証明書や書類が増えることになるかと思われます。