夫婦間での金銭のやり取りは原則贈与
夫婦間での生活費のやり取りは、日常生活においてまったく税金など意識せずに当たり前に行っております。
特に、専業主婦の妻が「大蔵省」として家庭の財布を握っている場合もよく見受けられます。
税務上これらの行為は原則贈与税の対象となります。ただし、贈与税の非課税規定において、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものは非課税とする」と定められているため普段は問題になりません。
多額の資金の移動は特例で対応
しかし、多額の金銭や資産が動くと話は別です。多額の金銭を子供名義の預金に振り込むとか、住宅の名義を妻に変えるなどの場合は当然にも贈与税の対象となります。
とはいえ、世の中の変化に対応して税制も、「教育資金の一括贈与」や「配偶者への住宅の贈与」が可能になるような特例措置を講じてきました。
老人ホームへの入居金は今後の課題?
老人ホームの入居一時金も多額の資金が動きますから、だれが負担するかによって贈与税の対象となります。
国税不服審判所で争われ、非課税とされた事例と、課税とされた事例が、それぞれあります。
判断の基準は「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるか否か」です。あとは事実関係により判断することとなっております。
非課税とされた事例
配偶者を介護付き有料老人ホームへ入居させるに当たり入居一時金(945万円)を支払った事例
課税とされた事例
配偶者と共に有料老人ホームに入居したが、主契約者を配偶者とし入居一時金(1億3,370万円)の9割を自分で出した事例
詳細は紙面の都合で省略しますが、金額の多寡が影響している面は否めません。
今後も増える事例と思われますので、安心して老後が過ごせるような特例措置や明確な基準の公開が急がれます。