会社法下で、旧商法上の有償減資と同様な効果を得るためには、資本金の額を減少させると同時に、その減少した資本金の額に対応した「剰余金の配当」により株主に金銭等の払戻しを行うことになります。
この剰余金の配当は、会社法上は「その他資本剰余金」をその原資とするものではありますが、税法は独自の基準で、「資本の払戻し」とするものの、そこに「みなし配当」が適用される規定もおいています。
平成13年度税制改正前
平成13年度の改正前は、いわゆる有償減資においては、原則、みなし配当の適用はありませんでした。それは、旧商法では資本金の減少決議において、資本金の額の減少と株主への財産の払戻しが一体となっていたこと、また、税法も商法の規定に準拠していたことによるものと解されています。
平成13年度の税制改正以後
平成13年度の税制改正で、減資払戻し(有償減資)については、その交付金銭のすべてが資本等の金額(現行資本金等の額)から交付されたとはせず、資本等の金額と利益積立金の双方から比例的に払戻されたとする、いわゆるプロラタ計算方式を導入しました。その算式は以下の通りです。
減資資本等金額=(減資等の直前の資本等の金額)×(交付した金銭の額等の合計額)/(前期末簿価純資産価額)
したがって、利益積立金が存する限り、原則、みなし配当は算出されます。
会社法の制定に伴って、平成18年度の税制改正では、分子が「減少する資本剰余金の額」に改められましたが、内容的な変更はありません。
プロラタ計算導入の要因
(一)、一部清算概念を取り入れた。つまり、払戻しは、部分的な会社からの脱退であり、その交付金銭は、株主が拠出した財産のみならず利益積立金からなる財産からも分配されている。(二)、発行法人の恣意性の排除、これは、旧法人税法では、払戻し交付金銭が減資資本金を超えてなされた場合、その超える部分が利益積立金、資本積立金のいずれになるかは会社の任意であったこと。(三)、利益等の資本組入れ、これは、過去に一定期間、最低資本金を満たすために無税で利益等の資本組入れが認められていたこと。(四)、商法・会計上の処理基準と税務上の処理基準の根本的な差異、などが挙げられるかと思います。