議事録は作成しなければならない
役員に対する退職慰労金の支払いは、株主総会承認事項です。総会や取締役会などの議事については議事録を作成すべきこととされていますので、遅れたタイミングででも作成しておくべきです。
議事録がないため株主総会の開催の有無を訴訟で争うことになった事案があります。
誕生会の食事会は総会にあらず
納税者側は、株主総会を開催した証拠として、「5:00 家族 食事会」との記載のみがある原告役員の手帳を示したのですが、税務署は、同食事会がその役員の誕生日を祝うために開かれたものであり、その席上で話し合われた内容についてメモ等による記録も取られていないことなどによれば、同食事会は、単なる親族の食事会であったものとみるのが自然かつ合理的である、と主張しています。
議事録の存否は総会の存否にあらず
開催当時に作成した議事録が存在しないからといって、株主総会及び取締役会が開催されなかったということにはならないし、株主は原告役員及びその親族の僅か4人であることに照らせば、親族での食事会における話合いの結果をもって、原告が株主総会としての決議としたことが特段不自然、不合理であるということはできず、株主全員による決議であることに照らせば、その有効性にも特段問題はない、というのが、納税者側の主張でした。
尋問等による丁寧な審理の裁判
裁判は公判法廷にて口頭弁論により主張を戦わせることになっているのですが、税務訴訟の場合、実際は、準備書面を事前に提出し、法廷では、準備書面を陳述しますと言うだけで、口頭弁論は終わり、次回日程を決めて、5分で終わるのが通常です。
しかし、本件税務訴訟は、裁判官の訴訟指揮が丁寧で、資料の不足は関係者への尋問により、事実関係を明らかにしていました。その結果、総会及び取締役会はいつも食事会を兼ねて、月に2度ほど開催し、登記が必要なときは司法書士に内容を伝えたうえで議事録作成を委任し、今次の場合も、総会たる食事会で代取辞任表明と退職慰労金の支給と委細の取締役会への委託決議をしていること、を明らかにしています。
税額計算の記録や、納税の手続、分納申請書類の存在が、裁判官に好印象を与えたのかもしれません。