記事投稿日:2015.09.30
会社法における「役員の賠償責任」
会社法では「役員の賠償責任」として、①役員の会社に対する賠償責任、②役員等の第三者に対する賠償責任の規定を置くとともに、③株主が会社を代表して役員等の法的責任を追及する「株主代表訴訟」制度が定められています。そのため、役員を被告とする訴訟は、①会社訴訟(原告:会社)、②第三者訴訟(原告:第三者)、③株主代表訴訟(原告:株主)の3タイプに分類することができます。
会社役員賠償責任保険(D&O保険)とは
これらのうち、②と③の訴訟リスクから役員を守る保険として「会社役員賠償責任保険」(D&O保険)があります。
D&O保険がカバーする範囲(勝訴の場合は争訟費、敗訴の場合は賠償金と争訟費)は、訴訟タイプ別に次のとおりになります。
賠償受取 | 保険金 | ||
役員勝訴 | 役員敗訴 | ||
会社訴訟 | 会社 | 保険支払対象外(免責) | |
第三者訴訟 | 第三者 | (A)争訟費 | (A)賠償金・争訟費 |
株主代表訴訟 | 会社 | (A)争訟費 | (B)賠償金・争訟費 |
Aの部分はD&O保険の普通保険約款契約、Bの部分はD&O保険の株主代表訴訟担保特約でカバーしている内容となります。
なぜ、このような保険の設計となっているかというと、株式代表訴訟の役員敗訴(B)の場合には、会社が賠償金受取人となり、会社と役員が利益相反関係となるからです。そのため、(B)の保険料を会社に負担させることは難しいため、この部分は役員個人に負担させるように「特約」とし、他のリスク(A)を会社側で保険料負担する契約の形を採用したようです。株主代表訴訟の役員勝訴の場合(A)には、正当事由なため、このような問題は生じません。
D&O保険の法人税の取扱い
税務では、このような契約形態をなぞる形で、損金の取扱いが定められております。
①基本契約(普通保険約款部分)の保険料(A)…損金算入
②株主代表訴訟担保特約(特約部分)の保険料(B)…法人負担の場合は役員給与 |
(個別通達「会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱い」)
掲載日時点の法令等に基づいて記載しており、最新の制度と異なる場合があります。