「休眠抵当権」とは?
不動産登記簿を確認していると、「乙区」欄に「債権額」が数十円、「原因」に明治・大正の年号が記載されている抵当権にお目にかかることがあります。
これは「休眠抵当権」又は「休眠担保権」とよばれるもので、既に返済を終えている債権、あるいは消滅時効を迎えている債権の抵当権です。抵当権の抹消は、登記申請の手続を踏まなければならず、期間が経過すれば、自動的に登記がはずされるものではありません。手続が行われず、放置されているものは、そのまま登記に残ってしまうことになるのです。
その金額が少額であることが多いため、実際には害があるものではありません。ただ、不動産を売却したい、借入を行い担保にしたいということになると、この「休眠抵当権」が登記に残っていることで、交渉の妨げになることもあるようです。
共同申請による抵当権抹消手続
この「休眠抵当権」の登記の抹消手続にはいくつかの方法があります。抵当権の抹消手続は、登記権利者(所有権登記名義人)と登記義務者(担保権者)が共同で申請することが原則となります。
そのため、登記権利者は、抵当権者の相続人全員の申請書、委任状、印鑑証明書を入手するなどして、抹消手続を進めることになりますが、百年前の抵当権者の相続人など何人になるか分かりませんので、非常に煩雑な手続になります(抵当権者が行方不明である場合には、登記された金額と利息、損害金を供託する方法もあります)。
裁判により抹消手続を行う場合
一方、抵当権者の相続人の協力が取り付けられない場合や煩雑な事務手続を避けたい場合であれば、裁判の判決を得ることで単独で抹消手続を行うことができます。
裁判というと、面倒なイメージがありますが、債権の認否に関わるものでなく、抵当権抹消の裁判なので、あくまでも形式的なものにすぎません。この場合、抵当権者の相続人も参加することなく、数十分で終了することになるようです。
ただし、訴状等が相続人に届くことになりますので、ビックリする方もいるかもしれません。あらかじめ、そのことを周知しておく必要があるでしょう。