「贈与の取消し」と「贈与税の課税」
民法では、書面によらない贈与は、贈与の履行が終わるまでの間は、その当事者はいつでも取消すことができることとされています。一方で、贈与税の課税のタイミングは、書面による贈与は、その契約の効力発生時、書面によらない贈与は、その履行の時とされていますので、一旦履行されてしまえば、贈与税が課税されます。
法定取消権・解除権による贈与の取消し
ただ、国税庁では、履行後に贈与の取消しや解除があった場合の特例的な取扱いとして「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」という個別通達を公表しています。その中に法定取消権等や合意解除に基づき贈与が取消された場合の贈与税の取扱いが示されています。
贈与契約が①詐偽・強迫による取消権、②夫婦間の契約取消権、③未成年者の行為の取消権に基づき取消し・解除が行われた場合には、元の贈与者の名義に変更し、一定の事実が確認された場合に限り、その贈与はなかったものとされ、納税者は更正の請求を行い税金を取戻すことができます。
合意解除による贈与の取消しの場合
このような法定取消権・解除権による贈与の取消しの場合を除き、当事者の合意による贈与の取消し・解除があった場合においては、原則として、当初の贈与税課税が取消されることはありません。しかし、当事者の合意による取消し・解除が次の事由に該当するときは、贈与税課税が著しく負担の公平を害する結果となると税務署長が認める場合に限り、その贈与はなかったものとして取扱うことができます。
①贈与の取消し・解除がその贈与年分の贈与税の申告期限までに行われ、取消し・解除したことが名義変更等で確認できること(更正の請求は想定していません)
②贈与に係る財産が受贈者により処分等されていないこと ③その贈与に係る財産について贈与者・受贈者が譲渡所得等の申告等をしていないこと ④受贈者がその財産の果実を収受していないこと(収受している場合には、その果実を贈与者に引き渡していること) |