厚生労働省の調査によれば、現状の定年制を60歳とし、61歳~65歳の労働者を定年後に嘱託として再雇用する企業が多くを占めております。
65歳以上の定年制を定めている企業は14%と少数にとどまっていますが、周知の通り、労働力人口の高齢化、厚生年金財政の逼迫による支給開始年齢の高年齢化等から、高齢者の安定雇用が社会的に急務となっており、「65歳定年制」の導入は、企業の社会的責任の視点から、遠からず避けられない課題になると思われます。
現状の問題認識と「65歳定年制」
近年、先進的に「65歳定年制」を導入した企業の代表例では、「60歳定年後、61歳~65歳の労働者を嘱託として再雇用する従来制度」の問題点を表に示したように認識し、改善に踏み切っています。
「65歳定年制」の課題解決策
このような「65歳定年制」の背景には、高齢者雇用に伴って解決しなければならないいくつかの課題に対する次のような考え方があります。
① 高齢者雇用による人件費増加対策の考え方:単なる人件費の増加(コスト増)でなく、「投資と投資回収」の課題と考え、高齢者の能力経験を活用して業績向上を図るため。業績に連動した賃金体系とし、査定を実施してやる気を高める。
② 新卒者の採用抑制が必要か:高齢者雇用が、新卒採用抑制に直接的につながるものではなく、年齢等にかかわらず、全社員が報酬(投資)を十分に超える付加価値を上げる人材戦略を採ることが重要である。
嘱託・再雇用制の問題認識と65歳定年制
項目 | 60歳定年制、嘱託再雇用制の問題認識 | 65歳定年制導入による改善 |
年収水準 | 定年直前・60歳時の年収に比べて50%程度と報酬が低く、身分が不安定でモラールやロイヤリティーの維持が難しい | 60歳~65歳の正社員化、年収水準を60歳時の60~70%へ引き上げ |
賃金体系 | 固定的な嘱託給・賞与の支給で、業績査定が適用されず、モラールが維持できない | 業績査定を実施、毎年の給与を洗い替え、業績連動型賞与の支給 |
③ 高齢者の増加による企業活力低下の懸念:活力は社員一人ひとりと組織の活性化を図る課題である。若年層の管理者就任遅れによるモラール低下が懸念されるが、それには例えば「65歳定年制」と「60歳役職定年制」をセットとする新陳代謝政策をとれば良い。
このような積極的な人材活用戦略をお勧め致します。