「技術経営」とは、「主に製造業がものづくりの過程で培ったノウハウや概念を経営学の立場から体系化したもので、技術を使って何かを生み出す組織のための経営学である」とされており、日本では一般にMOT(Management of Technology)と呼ばれています。その目的は企業が新しい技術を取り入れながらイノベーションを創出し、経済的価値を生み出すための戦略を立案・決定・実行することにあります。
技術経営の領域
1990年代の米国経済の復興は技術経営の進展によるものと見られ、その代表は、IT・バイオ・ナノテクノロジー・知財・特許戦略が挙げられており、特にコンピュータシステム開発ノウハウ、その開発に用いられるプロジェクトマネジメントの手法は日本の企業経営においても広く応用されています。
また、技術経営の目的から見ると、第2次世界大戦後アメリカから導入され、今日の経営にも活用されている品質管理(QC)・工程管理(IE)・日本独自に開発されたKJ法に代表される創造的発想法・“三現主義”による問題解決法・組織開発によるチームワーク化などの活用も技術経営の領域であると言え、特に“カイゼン”のコンセプト・手法は日本発で欧米に普及した実績をもつ技術経営の手法と言えます。
技術経営における経営者の留意点
日本企業が技術経営の進展を図ろうとする場合、次の点に留意したいものです。
①技術経営の目的が「新しい技術を取り入れて経済価値を生み出すこと」にある点を再認識し、アメリカ等から学び、自己資本利益率を高めるなど経営効率向上に貢献することに帰結させる。
特に日本企業の開発投資効率(投資対利益水準)は外国企業に劣る傾向があり、経営戦略の策定、技術経営において改善を図る。
②日本独自に発展しつつある目標管理制度運用の技術・チームワーク化技術と欧米技術をハイブリッドして活用することで、さらに日本企業の独自性を強化する。
③経営に技術活用を図る場合、特定の技術を偏重し、それ自体が目的にすり替わってしまう“手段の目的化”に陥らない。