国外転出時課税の「1億円」判定方法は?
平成27年7月からスタートする国外転出時課税制度は、有価証券等を1億円以上有する居住者に適用されます。
この有価証券の価額「1億円」という判定基準は、上場株式など取引市場があるものについては、時価(終値)の情報を取りやすいのですが、非上場株式等については、取引市場がないため、その株価を算定しなければなりません。
この場合、非上場株式の取引価額の算定によく用いられる「株式等を取得する権利の価額」や「株式等を贈与等した場合の『その時における価額』(みなし譲渡)」の通達規定を準用して算定することになります。
非上場株式の価額の原則的算定方式
非上場株式の価額は、「株式等を取得する権利の価額」の通達の規定を用いて算出した価額が原則的な株価の算定額となります。
この通達では次の①~④の順に従って、それぞれの金額で算定することになります。
①売買実例がある場合…最近の売買実例のうち適正なものの価額
②公開途上株式である場合…公開価格等を参酌した通常取引価額 ③売買実例がなく、類似法人の価額がある場合…類似法人比準推定価額 ④①~③に該当しないもの…1株当たりの純資産価額等を参酌した価額 |
実際には、非上場株式の取引においては、売買実例があるものも少なく、類似する法人を見つけることも困難であることから、④の1株当たりの純資産価額を参酌した価額を採用する例が多く見られます。
財産評価基本通達を準用することも可能
また、「株式等を贈与等した場合の『その時における価額』(みなし譲渡)」の通達規定により、相続税の計算で用いられる財産評価基本通達を用いることもできます。
ただし、相続税の非上場株式の評価では「企業の清算価値」を志向するのに対して、所得税の評価では「継続企業」を前提とすること等があるため、次の3点の調整を加えて評価を行うこととなっています。
①「中心的な同族株主」である場合は、常に「小会社」で評価すること。
②土地と上場株式は相続税評価額ではなく、「時価」で評価すること。 ③評価差額に対する法人税額等相当額(現行38%)の控除は行わないこと。 |