ピケティの提唱
ピケティの「21世紀の資本」は世界中で爆発的な売れ行きを示しています。ピケティは、資産格差を拡大させないよう、累進的なグローバル資産課税を提唱しています。個々人が持つ資産を全世界的に把握し、資産総額に応じて課税したうえで、税収を関係国間で配分するというものです。
資産課税への日本の制度化準備
わが国でも、資産総額への課税制度創設の準備は進んでいます。今年の税制改正事項として、従来の「財産債務明細書」を改変し、国外国内を問わないもので、且つ「国外財産調書」と同じように運営する「財産債務調書」制度が創設されます。懲役刑を含む罰則をもつ「国外財産調書」制度の施行に引きずられての見直しのようにも見えます。
罰則ナシでスタート
「財産債務調書」の新制度には、懲役刑を含むような罰則は設けられないようです。提出を義務付けられる人のプライバシーの開示を強制するに等しい、財産と債務のオープン化は、100%完璧な申告も限りなく不可能であろうし、心理的には相当な抵抗が予想されるところだから、と思われます。
罰則がなくてもまともな申告が期待できるものでしょうか。現行の「財産債務明細書」については、罰則がないため、提出義務があっても提出しない人が沢山おり、提出はするが形ばかりというものでも、これへの問合せは皆無です。
まずはスタートで少しのフォロー
従来と違うのは、「財産債務調書」の信憑性を担保するための税務調査の制度を設ける、としているところです。相続財産の事前調査のようになりそうです。調査非協力には罰則があります。でも、調査官が職権により「国外財産調書」や「財産債務調書」の書き換えをする職権更正というのはなさそうです。
そしてマイナンバーが来年から
財産申告と施行真近いマイナンバー制度をかけあわせると、当面の狙いは、相続財産の捕捉もれへの対処であるとしても、その先に資産課税としての「富裕税」を見据えている、ことが透けてきます。富裕税は、日本でも、戦後3年間実施されていましたが、フランスには今でもあります。
財産申告が富裕税の税額計算申告になるまでは、財産適正申告の実現は相当な困難事のように思えます。