法人税法の中の原則・例外の規定
法人税法をみると、例えば、「内国法人はこの法律により法人税を納める義務がある。」(4条①)とし、「ただし、公益法人・・・については、収益事業を行う場合・・・に限る。」(4条①)とし、また、「公共法人は、前項の規定にかかわらず、法人税を納める義務がない。」(4条②)と、それぞれの規定の間の、原則・例外の関係が明確です。
所得税法の中の原則・例外の規定
所得税法をみると、「非永住者以外の居住者 すべての所得」(7条①一)に課税するとし、「次に掲げる所得については、所得税を課さない。」(9条①)としてその中で、「相続・・・により取得するもの」(9条①十六)は非課税とし、さらに、「・・・相続・・・」(60条①一)により取得するものには譲渡課税する、とそれぞれの規定がありますが、各規定間の原則・例外の関係は条規の文言としては明確ではありません。
所得税法は暗黙知、あうんの呼吸
所得税法では、「すべての所得に課税する」とする7条と、9条の非課税とは矛盾しますが、7条の規定に拘らず9条があると、読むべきと解されます。法人税法と異なり、これは暗黙知です。
9条と60条も同じです。9条の規定に拘らず60条がある、と暗黙知的に解されます。
暗黙知の中身は後条優先の原則
他の法律では確認できませんが、所得税法に限っては、後条優先の原則という原理があるとしないと、条文間の整合的な解釈ができなくなります。この原理があるとすれば、暗黙知ではなくなります。
しかし、後条優先の原則を明確に否定した判例があります。平成22年7月の最高裁の相続年金二重課税禁止判決です。雑所得としての年金所得のうちに、相続税で課税対象となったものがあるときは、その部分について、重ねて課税してはならない、という判決です。9条非課税にかかわらず、年金雑所得課税があってもよいとは、解さなかったわけです。
最高裁の見解待ちの譲渡での二重課税
譲渡所得課税では9条非課税とされている相続課税済み分を除くべき、との争点で最高裁に2件の上告があります。後条優先の原則を否定した結果の当然の争訟です。
遠からず、判決がありますが、どういう理屈をたてるのか、関心の湧くところです。