記事投稿日:2015.02.23
第三者割当増資は時価発行で!
会社が資本金を増やすことを『増資』といいます。この『増資』の中でも新株主から金銭等の払込みを受けるものを『有償増資』といい、その新株主の募集範囲の違いから『公募』『株主割当』『第三者割当』の三種類に区別されます。このうち『第三者割当』による増資を同族会社が行うときは、『時価』で発行しないと、思いもよらぬ贈与税等の課税が生じる場合があります。
課税の理由『株主価値の移転が生じる』
なぜ『時価』でない場合に贈与税等が課税されるかというと、株主間で経済的価値が移転してしまうからです。例えば1株当たりの株価(ここでは時価純資産価額)@100円で発行済株式総数20株(株主A・Bが各10株保有)の会社が、新株主Cから時価の1/2の@50円で5株の増資を引き受けたとしましょう(いわゆる『有利発行』)。
増資前@100円 | 増資@50円 | |||
株数 | 時価総額 | 株数 | 払込金額 | |
A | 10株 | 1,000円 | ― | ― |
B | 10株 | 1,000円 | ― | ― |
C | ― | ― | 5株 | 250円 |
計 | 20株 | 2,000円 | 5株 | 250円 |
この増資が行われた後の1株当たりの株価(時価純資産価額)は、(増資前2,000円+増資額250円)÷増資後株数25株=@90円となり株価が下がります。A・Bは何もしていないのに1株当たりの株価が▲10円下がり、Cは@50円の支払で@90円の価値がある株式を取得している状況になります。
①増資後@90円 | ②移転前 | 移転分 | ||
株式 | 時価総額 | 時価総額 | ①-② | |
A | 10株 | 900円 | 1,000円 | ▲100 |
B | 10株 | 900円 | 1,000円 | ▲100 |
C | 5株 | 450円 | 250円 | +200 |
計 | 25株 | 2,250円 | 2,250円 | 0 |
結果として、AとBから、それぞれCに100円の経済的価値が移転してしまうのです。このCへの移転分200円((@90-@50)×5株)について、CがA・Bの親族である場合には、贈与税課税、親族以外である場合には、一時所得・給与所得等の課税対象となります。この課税リスクは、①既存株主が平等に増資を引受けない場合、かつ②時価発行増資でない場合に起こります。『第三者割当』の場合には、①は当然充たさないため、時価発行増資でなければ、課税リスクが避けられないことになります。
掲載日時点の法令等に基づいて記載しており、最新の制度と異なる場合があります。