再編成としての国家の枠組み破壊
トルコ・イラク・イラン・シリア・アルメニアなどに民族分断されたクルド人の民族国家確立への長い歴史をもつ武装闘争には日本国内にも同情者が多いが、似たような「イスラム国」建国武装闘争には同情者の声を滅多に聞きません。
賛否はともかくとして、既存の国家の枠組みが破壊されることにより、国家の枠組みが流動化することへの警戒感は、スコットランド独立をめぐる住民投票への世界の関心の高さからも伺えます。
別な方向からの国家枠組みの機能破壊
国家の重要な本質的機能としての徴税権を破壊する動きが先進資本主義の最先端部分に現れています。
税源浸食や利益移転(BEPS)は多国籍企業の当然のプランニングであり、既存の指導的な各国家は、自国に係る租税回避以外には関心が薄く、他国での自国企業の租税回避が自国の雇用拡大などの経済貢献している面があると助長的ですらあったため、結果として、巡りめぐって各国政府自身が税収を失い、「租税はただ愚直な者によって支払われる」ものとの認識が国際企業の中で助長されるに至っています。
多国籍企業の具体的な税源浸食手法
米国及び英国の議会公聴会で、これまでに、Microsoft、Apple、Hewlett-Packard、Starbucks、Amazon、Google などが招致され、合法的だが巨額な租税回避スキームについて報告がなされており、ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチなどという手法が知られるところとなっています。
OECDのBEPS取り組み
先進国クラブであるOECDが昨年からBEPS(税源浸食と利益移転Base-Erosion and Profit-Shifting)問題に数年がかりで本格的に取組み始め、調査・検討・計画策定を進めています。
それらの進行に合わせて日本でも税制改正が今後進められる予定ですが、利益配分や帰属について国際合意がなされ、統一化されるのは一朝一夕にいきそうにもなく、その実効性のある実現は難しいものと予想されています。
BEPS対策に効果がないと
法人税や消費税、さらには所得税、相続税の課税侵蝕を防ぎ得ないとすると、歴史的には国民国家機能の縮小と国際企業の存在意義の増大、国境や国民の意味の曖昧化が進行することになります。