出国時の「出国税」
出国(外国への移住による非居住者化)する時には、翌年の3月15日を待たずに出国時に確定申告(準確定申告という)することになっていますが、その準確定申告では今までにない課税がなされることになりそうです。
この10月21日の政府税調に財務省は、平成27年度税制改正項目として「出国税」を挙げ、資料を提出しました。
「出国税」創設の目的
租税条約上、株式の含み益の実現については売却した者が居住している国に課税権があるとされています。そして、キャピタルゲインを非課税とする国もあり、含み益のある株式等を保有する者が、その非課税国に出国し、その後に出国先で売却することにより、日本国内における課税を回避し、出国先でも課税なしで、二重非課税が実現できます。これへの対策が立法目的です。
キャピタルゲイン非課税国への出国
財務省資料は、キャピタルゲインの非課税国としてシンガポール、香港、ニュージーランド、スイスを挙げ、これらの国々への日本人の出国者数の推移を表にしています。それによると、平成25年では、シンガポール1,852人(平成8年は813人、2.3倍)、香港2,151人(同1,017人、2.1倍)、ニュージーランド8,444人(同2,517人、3.4倍)、スイス4,719人(同2,375人、2.0倍)と、これら4ヶ国で平均2.5倍の伸びを示しています。
諸外国における「出国税」
出国税は、出国に際し、財産を処分し現金化したものと仮定して所得税を課すもので米・英・独・仏・伊・西・蘭・加・墺・豪・デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・ニュージーランドでそれぞれ制度化されています。
出国税は、分類的には、全ての財産を処分したものとするのが一般出国税で、有価証券に限って処分したものとするのが制限出国税です。一般出国税の方が多数派ですが、わが国でこれから導入しようとしているのは、制限出国税です。
導入による問題点
未実現の所得に対する課税なので、担税力に欠くところがあります。また、日本での課税によって、次に出国先で課税されるに当たり、取得原価を出国税課税対象額にまで増加させ得ないと二重課税となります。