ビジネス社会で“人間力”という用語がよく使われます。人間性、人間味、人間らしさなどと似てはいますが、それらに比較して、より幅が広く、高い次元の力を表現しているようで、政府の研究会では「社会を構成し、運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義しています。
このような総合的な力が何故必要なのか、どのように人間力を確保すべきなのか、ビジネス社会に生きる企業人の立場から述べて見たいと思います。
“人間力”の多様性
ビジネス社会では、ゼネラリストが組織を率いるマネージャーとして働く時、業務知識・経験、マネジメント能力などを超えて、求心力を持って人間集団をまとめる総合的な力・統率力と言う高いリーダーシップ、すなわち“人間力”が必要とされます。
また、スペシャリストは自分の専門技術・知識だけに関われば済むわけではなく、異なる専門分野を担当する個々のスペシャリストが協働し、チームとして活躍する現代の業務遂行形態では、特に業務上の危機的状況では、一点突破を図るリーダーシップ“人間力”が必要とされます。
このような“人間力”は、マネジメントスキルのように、ある程度具体的な成功の法則性があるわけではなく、その場の状況に応じて難関を突破する組織力を引出し、勝利に導く総合的な力であり、定義に曖昧性はありますが、実戦上では大変価値の高い力と言えます。
“人間力”強化、トップの留意点
基礎学力・専門知識・技術・マネジメントスキルなどとは別次元にある“人間力”を開発するには、次のような考え方・方法をとるのが適切であると考えられます。
① 組織のリーダー層や候補者に、あえて修羅場をくぐる体験を積み重ねさせる。
② 役割・期待貢献に基づく成果と共に、必要な発揮能力として“人間力”を求める。 ③ リーダー層が危機的状況を突破した体験を交換する相互啓発の機会を設ける。 |
近年、アジア諸国への日本企業の進出が盛んになりつつありますが、海外ビジネスにおいては、進出国の文化の理解や語学力以上に、難関を突破する“人間力”が成功要因であり、海外での業務体験が“人間力”を高める機会となっています。