税務上の貸倒れ
税務上、貸倒れは、①債権の全部又は一部が法的手続により引き捨てられた場合の「法律上の貸倒れ」、②債務者の資力喪失により債権が回収不能となった場合の「事実上の貸倒れ」、③売掛金等に限り、債務者との取引を停止して1年以上経過した場合等の「形式上の貸倒れ」に区分されます。
法律上の貸倒れは、法人の経理のいかんを問わず損金の額に算入されますが、それ以外は、貸倒れとして損金経理したときに限り損金の額に算入されます。
法律上の貸倒れには、会社の判断が入る余地はなく、事実が生じた事業年度以外に損金算入が認められません。
破産債権の取扱い
更正債権や再生債権については、法律上の貸倒れについての取扱いはありますが、取引先が破産した場合の破産債権について、法律上の貸倒れについての取扱いはありません。その理由として、破産には債権の切捨てという制度がないこと、また、破産の態様によって法人格の消滅がなかなか特定できないこと、さらに、破産債権に連帯保証人がいる場合もあること、等が挙げられています。
破産の態様と法律上の貸倒れ
会社は破産宣告を受けても法人格が消滅するわけではなく、単に当該会社は解散するだけです。法人格は、裁判所が行う破産手続き終結の決定により消滅します。
しかし、多くの場合、破産手続き開始後に費用不足が判明し、破産手続きが途中で頓挫してしまうことがあります。すなわち、破産手続きの廃止決定です。この廃止のことを異時廃止といい、その効果は、破産の効果を招来に向かって消滅させるものです。
この異時廃止の状況に至った時、法人格の存在はどうなるか、です。異時廃止の場合も法人格は消滅しますが、現行の課税実務では、当該法人はいまだ清算中の会社として存続している、との理解です。
そうしますと、異時廃止の場合は、会社は清算中の法人として存続していることになりますから、その限りにおいて、法律上の貸倒れはありません。
したがって、事実上の貸倒れの判断ですから、時期をみて(場合のよっては破産宣告から10年、15年経ても)、回収不能である旨の事実を明らかにし、損金経理によって貸倒れを計上することができます。