耐用年数の算出の根拠は?
現在、税務上用いられる減価償却資産の耐用年数は『減価償却資産の耐用年数等に関する省令』(耐用年数省令)の別表に記載されているものが適用されます。『耐用年数省令』は昭和40年に公表されたものですが、もともとは昭和26年の『固定資産の耐用年数等に関する省令』を改訂したものです。
この昭和26年版には『固定資産の耐用年数の算定方式』というものが掲載されおり、耐用年数算定のルーツが示しています。
建物は『床』『構造体』など5要素で組成
例えば、当時の鉄筋コンクリート造りの建物(事務所・店舗用)の一般的耐用年数は75年でしたが、これは建物の組成部分毎の加重平均で求められものとされています。
耐用年数 | 全体を1万円とした場合 | 年要償却額(定額) | |
防水 | 20年 | 135 | 6.7 |
床 | 30年 | 720 | 24.0 |
外装 | 50年 | 720 | 14.4 |
窓 | 30年 | 1,260 | 42.0 |
構造体 | 150年 | 7,165 | 47.7 |
総合 | ― | 10,000 | 134.8 |
上の表の総合欄より、10,000円÷134.8≒74.18→75年ということのようです。
このように、建物は『防水』『床』『外装』『窓』『構造体』の各部分から成り立っており、建物附属設備は、これらの要素とは異なる個別の効用を有するものと区別され、各部の建築技術上の耐用年数を総合して制定されたものであることが見て取れます。
この昭和26年当初75年(法定:定率法)とされた耐用年数は、税収確保等の要請から昭和41年に65年(定率法)、平成10年には50年(定額法)と2/3に短縮されました。
IFRSは『コンポーネント・アプローチ』
一方、会計上は企業個別の特殊条件を加味した個別耐用年数を確立して、減価償却制度を確立すべきという主張もありました(昭和35年連続意見書第三)。ただ、日本では、この半世紀あまり税務基準の耐用年数が実務においてあまりにも定着してしまいました。IFRSでは『コンポーネント・アプローチ』といって償却資産の重要な構成要素別で把握します。建物も『構造体』『外装』『内装』など構造の複雑さや重要性に応じた区別単位で償却を行うことになります。