家庭用動産の評価
相続税の財産評価作業が終盤に入ってくると『これはいかがしましょうか…』と相続人の方に相談するものの一つに家庭用財産の評価があります。一般動産の評価については、財産評価基本通達に定めがあり、原則として1個又は1組ごとに評価しますが、家具や衣服、電化製品、書籍、アクセサリーなどの家庭用財産は、1個又は1組の価額が5万円以下のものについては一世帯ごとに一括して評価してよいものとされています。宝石や骨とう品、自動車など個別評価できるものは除き、残りのものは『家庭用財産一式 ○○万円』と評価明細書に記載することが一般的です。これらは程度の差こそあれ、どの家庭にも必ず保有されるものですが、所有関係が必ずしも明らかでないものや亡くなられた方の生活スタイルや経済観念など個別性がかなりあるでもあり、具体的な把握は誰であっても相当難しいものであるという性質があります。
昔は家屋の固定資産税評価を用いていた?
最近ではあまり用いられませんが、自用家屋の固定資産税評価額×3~4割という取扱が行われた地域もあったようです。昭和61年にはこの簡便算式を用いた判例もあります。固定資産税における家屋の残存価額は20%ですので、もし耐用年数を経過した家屋に故人が居住していたとするならば、取得価額×20%×30~40%で取得価額の6~8%となります。木造家屋に住んでいたならば、結果的には、そんなに的外れな評価とはならない例もありそうです。
損保会社や所得税(雑損控除)の考え方
損害保険会社が火災保険契約時に家財の金額を見積もる場合には、世帯主の年齢と家族構成(人数)で求める簡易の算定表があります。それより更に簡便ですが、同じような考え方のものが所得税の雑損控除にも用いられています。東日本大震災では次の表で求められる家族構成別家財評価額に被害割合を乗ずる方法も認められていました。
世帯主の年齢 | 夫婦 | 独身 |
~29歳 | 500万円 | 300万円 |
30~39歳 | 800万円 | |
40~49歳 | 1,100万円 | |
50歳~ | 1,150万円 |
これは損害保険会社の表では家財の新価に相当する額ですので、相続の場面ではそのままでは使えそうにはないですね。