個人事業者の『交際費』の『必要経費性』
確定申告の作業を進めていく中で、悩ましいものの一つに『接待交際費』があります。所得税では『交際費』について、法人税(租税特別措置法)のような法律の規定は存在しません。個々の支出ごとに、その『必要経費性』を判断していくことになります。
もともと営利目的で活動している法人と異なり、個人事業主は『事業活動の主体』としての顔と『家事消費の主体』としての顔の二面を持ち合わせています。個人事業者の方の支出する『交際費』も、領収書など支払事実がハッキリしているものであっても、業務遂行上必要なものなのか、そうでないもの(家事費)なのかの判断は難しいものです。例えば、個人事業者のゴルフ接待費も業務遂行上必要なものである限り、必要経費とすることを妨げるものはありません。ただ、必要経費とするには、『業務との関連性』『業務遂行上の必要性』を立証することが求められているのです。
不動産貸付業者のゴルフ接待費否認例
H22年の国税不服審判所の裁決に、不動産貸付業者のゴルフ接待費について、業務遂行上必要性がないものとして、不動産所得の金額の計算上、経費算入を認めなかった事例があります。この事例では、不動産貸付業者は7年間にわたり、年間30回以上、金額にして各年60~190万のゴルフ接待費を計上し、テナント代表者と元勤務先銀行の後輩などを接待していました。これらの接待目的は『賃貸物件を優良テナントに長く貸し付ける』『情報を得て不動産の購入を容易にし、購入資金の融資の点でも有利にする』ためであり、業務遂行上必要であると、納税者側は主張しました。
これに対して、不服審判所は、テナント代表者の接待は『ゴルフをする必要があったとは認めがたい』、元勤務先銀行の後輩の接待は『有用な情報が得られたとしても(中略)業務の遂行上直接必要であったとまではいい難い』とし、結局これらのゴルフは、『本人の趣味・嗜好』であり、必要経費には算入されないと判断しました。
もっとも、この事例では、実際にプレーしていない接待先を帳簿に記載したり、女子プロゴルファーのレッスン代が含まれていたりと、かなり心証が悪かったようです。客観的に『通常かつ必要』であると認められるものであるかがポイントのようです。