会社に対する無限責任
合名会社や合資会社が債務超過になっていて、会社の純財産を処分しても会社債務を完済できないとき、無限責任社員には会社債務を弁済する無限責任があり、また、その無限責任社員が死亡して、死亡退職となったときは、死亡時の会社債務に対して無限責任を負うものとされています。会社法上の規定です。
無限責任債務についての相続税の扱い
死亡した無限責任社員の負担すべき持分に応ずる会社の債務超過額は、相続税の計算上、被相続人の債務として相続財産から控除できます。
こういう理解は、現職の国税職員が執筆する相続税関係の種々の質疑応答事例集にほとんど類似の文章で、何十年も一貫して記載され続けてきております。民間の論者の執筆する書籍もほとんど類似の内容です。
書籍の場合、「文中意見にわたる部分は個人的見解」とのはしがきがありますが、ネットの時代になって国税庁の名の下のホームページにも、類似のものが掲載されるようになっているので、執筆者の「個人的見解」を超えた、国税庁の公的見解だったことが確認されました。
無限責任社員と有限責任社員の入れ替わり
無限責任社員甲と有限責任社員乙とが入れ替わった場合、甲の無限責任社員としての債務弁済責任が直ちに消滅するわけではないが、社員変更登記後2年を経過する前に債権者から甲に対し弁済請求がなければ、甲の責任は法的に消滅します。
甲はこの時に無限責任社員としての債務弁済責任の消滅の利益を享受します。それは、新たに乙が無限責任社員としての債務弁済責任を負うことになったことによるものであり、甲の債務弁済責任の消滅は、乙から与えられた利益と考えられ、甲には相続税法上のみなし贈与の課税が生じます。
一歩踏み込んだ見解ですが、これも国税庁のホームページ内の仙台国税局が公表している文書回答事例にあるものです。
民間でも一歩踏み込む手法展開
所得の分散・節税効果と相続税の節税効果のダブルメリットを享受する手法として、合名会社で投資用不動産を取得する、既存の会社があるなら合名会社に組織変更する、などという類の新型の提案を最近度々見聞きするようになっています。