収用等により代替資産を取得して圧縮記帳の適用を受ける場合、差益割合の算出は不可欠です。差益割合は、[(対価補償金-譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額-譲渡費用)/(対価補償金-譲渡費用)]で求められます。
差益割合の適用を巡る争い
代替資産を複数取得した場合の差益割合は、その取得資産の合計額全体に適用して圧縮限度額を求め、その範囲内で任意の方法により圧縮記帳ができるとする納税者の主張と、一方、取得した個々の代替資産ごとに差益割合を適用して個々の資産ごとに圧縮限度額を算定、その上で圧縮記帳をすべきであり、この場合、圧縮損として損金経理しなかった代替資産は、圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産には含まれないとする税務署の主張とが対立していました。
一審、二審とも税務署の主張が支持され、現在、納税者側から最高裁に上告受理申し立てがなされています。以下、設例で両者の差異を確認してみます。
収用等に係る譲渡資産
資産区分 | 帳簿価額 | 対価補償 | 譲渡費用 |
土 地 | 10,000 | 100,000 | 1,000 |
建 物 | 21,600 | 60,000 | 1,000 |
取得代替資産
資産区分 | 取得価額 | 用途 |
土 地 | 90,000 | 事業 |
建 物 | 50,000 | 事業 |
機械装置 | 18,000 | 事業 |
※ 差益割合=0.8(譲渡資産全体で計算)
(160,000-31,600-2,000)/(160,000-2,000)
圧縮限度額の計算と圧縮損の計上
納税者の主張では、圧縮限度額は、126,400(158,000×0.8)となり、その範囲内で任意に、例えば代替資産の土地に80,000、建物に46,400の圧縮損を計上することができることになります。
一方、税務署の主張ように、個々の取得資産ごとに差益割合を適用して圧縮限度額を計算すると、土地72,000、建物40,000、機械装置14,400が限度額となり、さらに、納税者側の処理では、機械装置の取得価額が損金経理により圧縮されていないことから、圧縮限度額の計算上、代替資産の取得価額には含まれないことになります。
結果、税務署の主張からすれば、圧縮限度額は112,000となり、土地については8,000、建物については6,400の圧縮超額が生じることになります。
両者を比較した場合、一概に言えませんが、土地の圧縮損が多く計上できた方が有利です。