簿記で考える「(量的)金融緩和」
デフレ脱却を狙ったアベノミクスの「3本の矢」のうち「第1の矢」(大胆な金融緩和)が他の施策に先行して進められています。「中小企業には全く関係ないよ!」と言われるかもしれませんが、簿記で考えると「日銀」「市中銀行」「企業」のBSが借方・貸方で繋がっていることがわかります
企業では「預金」というのは資産(借方)ですが、銀行では「預金」は負債(貸方)の位置づけになります。銀行の負債(貸方)を増やして資金を民間に流していこうとする施策が「(量的)金融緩和」となります。
第一の「蛇口」:日銀の貸方(負債)
日本銀行が供給する通貨のことを「マネタリーベース」といいます。
マネタリーベース=日銀券発行高(C+V)+貨幣流通量+日銀当座預金(RB) |
日銀はお札を発行していますが、硬貨は政府が発行していますので、上記算式のうち貨幣流通量以外の「日銀券発行高」と「日銀当座預金」は日銀がコントロールできる数字です。日銀は国債(資産)を市場購入する等して日銀当座預金(負債)を増やし、市中銀行に資金を回すことで、「マネタリーベース」を今後2年間で倍増させる予定です(H24末138兆円→H26末270兆円)。
第二の「蛇口」:市中銀行の貸方(負債)
ただ日銀が資金を銀行に供給しても、民間に回らなければ意味がありません。「銀行を除く民間が保有する現預金の合計」を「マネーストック」といいます。これは民間の現預金を直接カウントする訳ではなく、市中銀行の貸方数値等に着目します。
マネーストック=(現金通貨-銀行保有の現金(V))+市中銀行預金(D) |
また、マネータリーベースとマネーストックの関係(波及効果)は次のように示されます。
マネーストック=マネタリーベース×貨幣乗数(信用乗数) |
バブル時には、この貨幣乗数は13前後と高かったのですが、デフレ経済下では資金需要が少なく、25年5月の貨幣乗数は7.2です。その意味ではアベノミクスの「第2の矢」(財政政策)、「第3の矢」(成長戦略)も金融緩和策の成否の大事な鍵になります。