専門人材とは、「一芸に秀でた人材」のことを言いますが、企業にとって、「自分が得意ことだけは高度にできるが、他のことには無関心な、いわゆる専門バカ」よりも、「様々な専門人材同士で、協力しながら自分の専門分野を深く掘り下げることができる人材」の方が頼もしいと言えます。
例えば、異なる分野の専門家が、それぞれの専門技術を使い、協力して顧客ニーズに対してユニークな機能をもった商品開発を行う場合がそれに当たります。
“穴を深く掘るには幅がいる”
「ミスター合理化」と称された元経団連会長・故土光敏夫氏は“穴を深く掘るには幅がいる”と言いました。
つまり、専門性を深めるには、自分の専門領域の知識・技術だけを深く知っているだけではなく、その周辺の事柄について関心をもち、様々な知識・経験を持っていると、自らの知識・技術をより深く掘り下げることができる、と指摘したわけです。
例えて言えば、プロ野球の三割バッターは、自分の打撃技術を高めることだけではなく、相手のピッチャー・キャッチャー・野手の心理やプレーの仕方・監督の采配の仕方を良く研究し、知っているので、ヒットになり易い打撃ができるのと同様です。
“チームワーク”を活かして育てる
頼もしい専門人材を育てるには“チームワーク”の力を活かすのが上策と言えます。
すなわち、企業の戦略目標を達成するために、顧客のご満足を上げる商品開発、販売施策展開などの具体的・テーマのもとで、
関係する専門人材を集めて、プロジェクトチームを編成するのです。
チームはそこにいる人々に共通の使命・役割・具体的目標を与えることによって、一体となった協力関係を形成します。
そして、専門人材が自分の専門知識・技術を駆使しながら、同時に他の専門分野の知識・技術や顧客がいる市場での生の反応などにじかに触れて、自らの幅を広げながら自分の穴を深く掘って行くことができるのです。
仕事と専門人材の育成は不離一体
このように、実際の仕事と専門人材の育成は、チームワークを通じて不離一体、同時並行的になされ、その両方を意識したプロジェクトチーム運営のマネジメントが、経営と専門人材育成に有用と言えましょう。