価値喪失特定管理株式の上場廃止手順
上場株式の上場廃止には手順があり、上場廃止の可能性が出てくると、監理銘柄となり、さらに上場廃止が確定すると整理銘柄となり、原則として1か月後に上場廃止されます。監理銘柄になっても、すぐ解除になるものもあります。オリンパス、大王製紙などがその例です。
価値喪失特定管理株式と証券会社
株主の保有する株式は、証券会社においては、上場廃止により特定口座から「特定管理口座」(上場廃止後の株式を保管する口座)に移管されます。その後倒産等が確定し、清算結了となり、あるいは、日本航空のように100%減資が実施されると、その株式の無価値化が確定します。そうすると、証券会社はその元株主の顧客に「価値喪失株式に係る証明書」を交付します。
価値喪失特定管理株式と税務手続き
「価値喪失株式に係る証明書」は、その交付に係る年分の確定所得申告書に添付することにより、価値喪失株式の取得価額相当額を株式譲渡損とみなし、他の株式等の譲渡益と相殺することができる特例制度を使えます。
上場株式の譲渡損失については、配当所得との損益通算及び株式譲渡損失の3年間の繰越控除の規定の適用があります。整理銘柄になって1円の株価になったところで売却した株主の譲渡損も、上場株式の譲渡損であることに変わりないので、配当所得との損益通算及び譲渡損失の3年間繰越控除の規定の適用があります。
従来の取扱い
価値喪失株式の損失は株式譲渡損とみなされるものの、配当との通算、3年繰越控除の規定の適用はありません。理由は、特定管理口座株式は、すでに上場廃止となった株式なので、非上場株式に分類され、そして、生じたとみなされた譲渡損失は、非上場株式の譲渡により生じた損失ということになり、上場株式への特典を享受できなかったからです。
非上場の価値喪失株式は上場の仲間
今年の税制改正で、価値喪失特定管理株式に係る価値喪失損について、上場株式配当との通算、株式譲渡損失3年繰越控除の規定の適用が受けられるようになりました。
上場株式の痕跡を残すものは、とことん上場株式の仲間として遇する姿勢に転換したからです。