課税の便法の合憲性
自治体の中心的租税の一つである固定資産税・都市計画税は、自治体サービスとの応益性から、その納税義務者を、本来的に固定資産の所有者としているものですが、徴税の便宜から1月1日の登記名義人にその年の固定資産税等を負担させることにしています。
こういう便法が憲法29条に違反しないかという疑問があるところ、最高裁はこれを立法裁量の範囲内のこととして、違憲ではないとの判決をしています。
税負担調整は権利であり義務である
しかし、最高裁は、土地、家屋の真実の所有者でない者が登記簿上の所有者であるために、固定資産税等の納税義務者として課税された場合においては、課税を免れた真の所有者に対して、納付税額に相当する利得につき、不当利得返還請求権を持つことになる、と判示しています。
固定資産税等の課税庁は、本来は真実の所有者に課税すべきところながら、法律上、その探索及び調整の煩雑な事務から解放される制度になっています。他方で、民間人同士では、その税負担の調整を権利義務の清算として行うことが当然で、それを忌避するのは不当利得となる、というのです。
異なる路線を行く国税当局
国税当局は、固定資産税等の負担調整額を不動産の売買価格の追加払いとみなしています。表面上の納税義務者以外が負担する調整額は固定資産税そのものではないから、取引代金の一部にすぎない、という理由からです。
この当局見解は、平成7年に消費税基本通達にて表明され、平成13年、14年の国税不服審判所の裁決で支持されるに及び、全税目を通じた見解となりました。
しかしこれは、最高裁の判例との関係においては、逆行的です。
ボタンの掛け違いではないか
不動産取引では、固定資産税等ばかりではなく、電気ガス水道料金等の日割清算なども行われることがあり、同じ発想に立つとこれも不動産の対価になってしまいます。
マンションの滞納共益費などの場合はマンション価格の減価要素になりますが、固定資産税等や電気ガス水道料金等は物件価格に影響しませんから、譲渡代金を構成するという発想は、その根源でボタンの賭け違いをしている、のではないでしょうか。