訴訟の行方に追い風
1億円の儲けに追徴額6.9億円の脱税事件と聞けば、馬券購入での刑事争訟事件のことか、とすぐ連想されます。訴訟の行方を占うのは困難ですが、ネット上ばかりでなく、新聞紙上でも繰返し報道がなされているので、世論の反応からして、刑事告訴され、一生かかっても払いきれないかもしれない追徴税額を課せられている納税者に追い風が吹いているような印象があります。
公営賭博分離所得の創設
情報によると、今年の税制改正要望として、国税庁は、「公営競技等に係る所得の課税方法について」として、賭博への課税方法改正に関する具申をしていたようです。
賭博所得について、無条件に一時所得とする現行の執行内容に自ら疑問をもってか、あるいは訴訟の敗北を想定してなのか、それともむしろ賭博所得非課税の実態に切り込むためなのか、不明です。
分離課税、源泉徴収、支払調書
具申の内容は、公営競技等に係る賭博所得を一括りにして、申告分離課税の対象とする、というものです。そして、払戻金に対応する馬券等の購入金額を控除した残額について、100万円を超える場合には、支払調書の提出対象とし、10%の源泉徴収を行う、という課税方法を提案しています。
先物取引に係る雑所得等の分離課税制度と似た形です。源泉徴収と支払調書提出とセットで、現在の事実上の賭博所得非課税状態を解消しよう、ということのようです。
来年への見送りと再上程法案の予測
ただし、結果的に、平成25年度税制改正に関しては見送られました。今年中に、冒頭の馬券訴訟が確定しないであろう、との予測が働いてのことと思われます。なぜなら、判決により、賭博所得を雑所得とする余地が認められてしまったら、競馬、競輪、競艇、オートレースなどの競技場に散らばっているハズレ券を定期的に拾いに行き、公営賭博に係る雑所得をマイナスとして、年金所得を圧縮できてしまうので、時間の余裕はないからです。
来年度税制改正の下馬評
大方の予想としては、来年度の税制改正案で改正項目に入ってくるのではないか、と取り沙汰されています。年金所得との相殺が可能となる余地を排除し(分離所得化)、現金決済での券購入の場合は追跡不可能なのでハズレ券の経費性を排除する、という規定になることも予想されるところです。