大々的な報道が続いている
競馬の当り馬券による所得を確定申告しなかったとして所得税法違反に問われた元会社員の男性(刑事訴追されたことにより勤め先を解雇された)に対する大阪地裁の裁判が競馬ファンらの関心を集めており、日本中央競馬会(JRA)などには、課税の仕組みについて問い合わせが相次いでいる、と報道されています。
賭博所得への課税の実態
賭博による所得は、宝くじ・サッカーくじ(TOTO)が非課税とされている以外は、すべて課税の対象です。しかし、賭博所得に係る課税事件はかつては存在しませんでした。実態として、賭博所得は法令規定に拘わらず実質的に申告不要非課税でした。
しかし、最近は馬券購入も窓口での現金支払いだけでなく、銀行口座振替によるプッシュホン電話・携帯電話・インターネット経由での申し込みが一般化し、当り馬券保持者が特定できるようになっているため、今後は課税申告が必要かどうかの判定が必須となっています。
どう出るか刑事判決、民事も同時進行
刑事事件の判決は、5月23日に言い渡されるようです。また、外れ馬券を経費と認めずに課税処分したのは違法だとして、国に対して課税処分の取り消しを求めた税金訴訟の第1回口頭弁論が3月12日、大阪地裁(田中健治裁判長)で開かれ、こちらの行政訴訟も同時進行中です。
外れ馬券は経費にならないのか
訴状によると、大阪国税局は、的中した馬券の購入費のみを経費として控除し、平成17~21年の5年間に競馬で得た所得計約34億円を申告しなかったとして元会社員に課税処分しています。これに対し、元会社員側は「外れ馬券の購入費も総収入を得るための経費であり、所得計算上控除すべきもの」として、所得は計約1.5億円にとどまると主張し、課税処分の取り消しを求めています。
一時所得か、雑所得か
課税当局が賭博所得を一時所得とするのは、所得税基本通達に「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等」を一時所得として例示しているからです。しかし、儲けの7倍近い追徴になる課税処分は、担税力を課税の根拠とする所得税の趣旨から考えて異常です。雑所得とする余地があってもよさそうに思われます。