財産税としてのキプロスの預金税
キプロス政府は、ギリシャの財政危機を受けて経営が悪化した国内の銀行を立て直すため、EUなどから100億ユーロ(約1.23兆円)の支援を受けることになり、その前提として、10万ユーロ以下の預金には6.75%、10万ユーロ超には9.9%の一回性の税金を銀行の預金者に課す異例の措置を求められていました。これに対して国民が強く反発し、議会に提出された法案は、反対36票、棄権19票で賛成は1票もなく、否決されました。
日本でも最近話題になったものがある
日本でも、2年ちょっと前に、テレビ朝日「スーパーモーニング」で、消費税に代わる税の一種として貯蓄税の創設が話題として採り上げられていました。一人当たり預金残高1000万円超に対して毎年2%の課税をする、というものでした。納税者番号制度の導入が必須ということでした。
現実に日本でも実行されたことがある
昭和25年の富裕税は捕捉可能なすべての財産を対象にし、個人財産500万円超に対して0.5%~3%の4段階の累進課税を毎年課しました。富裕税法は3年でもって廃止となっています。
昭和21年11月施行の財産税は個人財産10万円超に対して25%~90%の累進税を課しました。これは1回性の税でした。
戦時補償特別税は100%税率でした。戦時中に発生した民間企業の政府に対する未払代金の請求権に対する課税です。実質の踏み倒しです。これも1回性の税でした。
非戦災者特別税も1回限りの税で、非戦災借家人に家賃の3ヶ月分、非戦災家屋所有者に対しては6か月分を課税しました。戦災者と非戦災者の不公平是正を名分とした税で、土地バブル恩恵の不公平是正を名分とした平成初期の地価税も類似の税です。
キプロスの預金税から学ぶべきこと
キプロスは地中海に浮かぶ島ですが、タックスヘイブン国として栄えていました。特にロシア富裕層の資金が流入してGDPの800%もの預金が集まっていると言われています。キプロスの高額預金者のほとんどは外国人です。
タックスヘイブンへの外国からの投資家には選挙権がありませんから、財産税課税の対象となり易いわけで、キプロス預金税の落とし所はそこに収斂していくと思われます。資産フライト実行者は肝に命ずるべきです。