相続二重資格の二つの事例
事例1 婿養子夫婦に子がないまま養子の夫が死亡して相続が開始したとすると、養親実親も他界していた場合、相続人は妻と兄弟姉妹になりますが、妻には配偶者としてと兄弟姉妹としての相続資格があります。
事例2 子が母の妹の養子になったものの、母もその妹も祖父より先死した場合、祖父の相続で、養子になった子は母と養母の両方の代襲相続人として相続資格を持ちます。
相続二重身分で異なる二つの事例
相続税の総額の計算では、法定相続分と代襲相続分の両方がある場合は二重身分としてこれを合算することにしていますが、事例1の配偶者と兄弟姉妹との法定相続分の重複では行政先例は配偶者の身分のみを認めるとしているので、合算はありません。
二重身分と相続人の数
また、相続税法では、相続人の数も税額計算に影響します。相続人の数という場合、相続資格者の数、相続人実数、のどちらなのでしょうか。相続税法には、民法第5編第2章規定の相続人の数としか書かれていません。
法定相続人の数とは相続資格者の数のことと解して相続申告したところ、税務署がこれを実数と解して申告の訂正を勧奨してきたので、訂正申告をした上で、更正の請求をし、更正なしの通知処分、異議申立を経て審査請求事例になったものがあります。冒頭に掲げた事例2です。
相続資格者の数が法定相続人の数か
納税者の主張は、各資格に係る法定相続分を合算して相続税の計算をするのであるから、相続人としての資格の数で基礎控除額を計算するのが適合的というものでした。
審判所は、民法第5編第2章の各条は、相続人となり得る者の範囲及び要件を規定したものであり、代襲者の資格などを有することになれば相続人の1人になれるという結論を導くためのものであり、資格が重複する相続人がいたとしても、相続人の実数が増加する訳ではないので、請求人の主張は採用できない、としました。
通達にも触れたものがある
なお、通達としては、養子の数の制限に関する条項に於いて、代襲相続養子は実子扱いとなることを確認しつつ、その中で、代襲相続養子で且つ直養子の場合に触れて、相続人数は実子1人としているものがあります。