事業承継税制の柱は、何といっても平成20年に創設された非上場株式等(一定の部分に限ります)についての相続税・贈与税の納税猶予の特例です。この特例ですが、一定の要件を満たすことによって、相続税についてはその株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税額が、一方、贈与税についてはその株式等に対応する贈与税の全額の納税が猶予されます。
そして、納税が猶予された相続税・贈与税は、先代経営者(贈与者)・後継者の死亡等により免除されることになっています。
申告期限後猶予期間中の厳しい要件
しかし、相続税・贈与税の申告期限後5年以内に次のような事実が生じた場合には、納税の猶予は打ち切られます。
①特例の適用を受けていた非上場株式等についてその一部を譲渡等(贈与も含みます)した場合
②後継者が会社の代表権を有しなくなった場合
③一定の基準日において雇用の8割を維持できなくなった場合
④会社が資産管理会社に該当した場合
したがって、少なくとも申告期限後5年間はいかなる事情があろうとも上記4要件は満たし続けなければなりません。
打ち切られた猶予税額
では、猶予を打ち切られた場合、今まで猶予されていた相続税額・贈与税額はどうなるか、ですが、全額を納付することになります。その納付は、非常に厳しく、要件を満たさなくなった日から2ヶ月を経過する日までに納付しなければならず、また利子税の額にあっては、申告期限の翌日から猶予されていた期間までに応じた額を納付しなければなりません。
制度の利用が進まない
上記のように要件が非常に厳しいこともあって制度の利用がなかなか進んでいない状況です。日本商工会議所や経産省などは、制度導入から4年が経過したにもかかわらず、わずか500件程度の利用にとどまっていると指摘し、平成25年税制改正の要望事項の1つに事業承継税制の見直しとして、雇用8割維持の緩和、猶予期間も後継者の死亡等ではなく申告期限後5年間として猶予税額の全額免除等を掲げています。
なお、先の社会保障の安定財源の確保法等(消費税増税法)においても事業承継税制の見直しが明記されています。平成25年での改正の可能性が大です。