海外直接投資は、新規事業であることには変わりがありません。したがって、新規事業を遂行するための「人」、「もの」、「金(資金)」が必要となります。中小企業の海外直接投資においては、この基本的要素を如何に揃えられるかが成功の鍵となります。
海外直接投資の必要条件
中小企業白書2012年版では、「直接投資を開始するために必要な条件」として、①企業に資金的な余裕があることを挙げる企業が74.6%と最も多く、続いて②進出先の法制度や商慣習の知識があること60.3%となっています。以下、③販売先を確保していること54.7%、④信頼できるパートナーがいること53.9%、⑤進出先の市場動向についての知識があること44.8%、⑥黒字化の見通しが立っていること33.7%、⑦海外直接投資に詳しい人材を社内に確保していること32.8%となっています。
海外直接投資への障害
逆に現地法人が直面している商取引面の課題・リスクを見てみると、生産拠点を保有する現地法人では、①現地における品質の管理54.3%が最も多く、続いて②現地におけるマーケティング34.3%、③現地向け商品の生産・供給体制の構築28.6%の順となっています。
また、販売拠点を保有する現地法人では、②現地における品質の管理43.8%のほかは、①現地におけるマーケティング48.7%、③現地ニーズの把握・情報収集37.0%、④現地における取引条件34.6%といった販売に関する事項が課題・リスクとして認識されています。
必要条件と障害から解ること
資金面では必要条件として認識されているものの課題・リスクとしての認識が低くなっていることから、進出時の資金は基本的に調達できていると思われます。
一方、必要条件として、進出先の法制度や商慣習の知識があること、販売先を確保していること、進出先の市場動向についての知識があること、海外直接投資に詳しい人材を社内に確保していることが挙げられているにもかかわらず、課題・リスクとして現地における品質の管理、現地におけるマーケティング等が挙げられているのは、それを解決できる人材が不足していることが障害となっていると思われます。