所得税法では、出国とは、単に「国を出る」という意味ではありません。
出国とは、居住者(国内に生活の本拠を有している人)については、納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しなくなることをいい、非居住者(居住者以外の人で国内に一定の所得を有している人)にあっては、納税管理人の届出をしないで国内に居所を有しなくなることをいいます。
つまり、この納税管理人の届出をして国を出た人は、所得税法上の「出国」には該当しないことになります。では、納税管理人の届出をした時としない時で、その法的効果にどのような違いが生じるか、です。
ここでは、給与所得者である居住者が1年を超える予定で年の中途に海外赴任する場合についてその違いをみてみましょう。
納税管理人の届出をしなかった場合
勤務先では、届出の有無にかかわらず出国時までに年末調整の手続きをしますが、他に不動産所得等がある場合には、本人は予定納税や確定申告も出国時までに、申告・納税の手続きをしなければなりません。
また、出国の翌日から、出国者は非居住者となりますが、不動産所得等の国内源泉所得がある場合には、非居住者であっても、日本での申告義務があることから、更に翌年3月15日までに確定申告をする必要があります。その際には、出国時にした確定申告に係る納税額は精算されます。
納税管理人の届出をした場合
勤務先での年末調整は当然として、申告及び納期限は、予定納税はもちろんのこと確定申告も翌年3月15日までで通常どおりです。これら申告及び納付は納税管理人が実施することになっています。
したがって、納税管理人の届出をしなかった場合のように、出国時に確定申告をし、さらに、翌年3月にもう一度確定申告をするといった二度手間を省くことができます。
扶養親族等の判定時期
また、納税管理人の届出をした海外赴任者で国内に不動産所得等総合課税の対象となる所得を有する場合、扶養親族の判定時期は、その年の12月31日の現況で判定できますが、一方、納税管理人の届出をしない海外赴任者の場合は、出国時で判定することになっています。
なお、納税管理人は、国内に住所又は居所を有する個人でも法人でも構いません。