非人道的な連帯納付義務
相続税の連帯納付義務については、以前から、「不意打ち」的に納税を迫られること、担保提供の上での延納の場合の担保価値下落リスクが税務当局・担保提供者以外に転嫁されてくること、10数年も前もの相続税が問われることによる延滞者の高率延滞税の負担まで負わされること、相続財産だけでなく元々の固有財産まで没収される、等々の問題点が指摘されていました。
悲惨なケースも珍しくない
特に、バブルの影響で路線価が異常に高騰した年の相続だった場合、その相続税の額は、その後に相続財産全部を処分したとしても、その処分価格を遥かに超えてしまうことは珍しくありませんでした。
延納の許可を受けて、相続財産のほとんどを担保に供していた場合で、滞納に至り、担保物は処分させられても、地価下落で結果的に滞納税額だけが残り、他の相続人にしわ寄せがいく、という事例が沢山ありました。
ようやく腰を上げたが
連帯納付を迫られても、所有財産が少なければ、開き直りも出来ますが、財産があると差押さえの対象になり、給与債権の差押さえもあり得ることなので、納税者はパニックになってしまいます。
それで、平成23年6月改正と平成24年3月改正との2段階で一定の問題解決がなされました。平成23年6月改正では、
① 連帯納付者負担の延滞税の利子税化
② 不意打ち予防の事前情報提供の制度化
平成24年3月改正では、
③ 連帯納付義務の5年での時効的消滅
④ 延納・納税猶予の承認を受けた相続税について連帯納付義務の不発生
ということになりました。
なぜ一度の改正で済ませない?
これらの改正は、①は平成23年4月1日以後の期間について適用され、②は施行日以後で、③④は平成24年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税について適用されます。ただし、同日において滞納となっている相続税についても、上記③④の改正と同様の扱いとされます。
従来も、追徴当事者の方がむしろ心苦しかったようで、連帯納付の追徴は、法令の規定の厳格さほどには厳しくありませんでしたが、恩に着せるかのように、少しづつの小出しの改正をすることには、毎年少しづつの改訂版を繰り返す会計ソフトの営業戦略のような小賢しさを感じます。