平成23年度税制改正法案の目玉であった相続税の増税案(基礎控除の引下げ、税率構造の見直し等)は、分離され、継続審議中でしたが、結局、今改正案から削除、年末に取りまとめられる抜本改革の中で議論されることになり、先送が確実となりました。
相続税の課税方式
相続税のある国では、相続税の課税方式は、遺産課税方式と取得者課税方式に大別 されます。
遺産課税方式は、被相続人の遺産そのものに課税する方式で、米国、英国等が採用しています。その特徴は、遺産の処理及び納税等には関しては、相続人が関係しないで遺産管理人があたる点です。
一方、取得課税方式は、被相続人の遺産を取得した相続人等が納税義務者になる方式で、フランス、ドイツ等が採用しています。その特徴は、相続人等で遺産を分割し、相続人等が取得した遺産に担税力を見出して課税する点にあります。
なお、遺産課税方式を採用している国の贈与税は、贈与者が納税義務者となり、一方、取得者課税方式では受贈者が納税義務を負います。
我が国は、取得者課税方式の変型である法定相続分課税方式を採用、お隣の韓国は、遺産課税方式の変型を採用しています。各国は、遺産課税と取得者課税を基本形としながら、それぞれの国の実情にあった相続税の課税方式を採用しているようです。
多くの国が相続税廃止の方向か
相続税(国税としての相続税)は、多くの国でゼロ又は廃止に向かっているようです。アジアでは、香港はもちろんのことシンガポール、マカオ、ニュージーランド、オーストラリア、タイ、マレーシア、インドネシア等です。隣国の中国ですが、相続税法はありますが相続税はありません。
一方、欧米諸国ですが、スウェーデン、スロバキア、ポルトガル、スイス、オーストリア、イタリア、カナダ、ロシア等です。
なお、カナダでは、財産移転時には所得税を課しています。
今後の相続税制の在り方(立法政策)
世界各国は、いかに富裕層を自国に取り込むか、まさに富裕層獲得のための租税戦略として相続税制を考えているようです。
我が国においても、財産に占める土地の割合が減少傾向にある昨今、富裕層がいつまでの自国に留まってくれる保証はありません。