通達の借地権理論
土地所有者である地主が、更地価格1億円の土地について、借地権を立退料6000万円を支払って買い戻して、更に、その借地権を他人に6000万円で借地再設定すると、 借地権の取得費も新規設定収入も共に6000万円なので
6000-6000=0 となるように思えます。
しかし、ここの計算は、
6000-6000×0.6-6000×0.05=2100
(土地は先祖伝来のもので取得費不明、旧借地権は自然発生なのでかつて借地権の譲渡計算はしていない、という前提)となるような算式が、通達に書いてあります。
逐条解説では通達を否定
ところが、この通達を解説する本には、「このような事例にあっては、法形式上は旧借地権の消滅、新借地権の設定という手順を踏んだことになるが、その経済的実質は、旧借地権者から新借地権者への借地権の移転とみることができ、その借地権の内容には何ら変更がないと解する余地が多分にあるにもかかわらず、この通達をそのまま適用して前述の算式に従って計算することにより課税される所得が発生することになろう。そこで、このような事例については、この通達を形式的に適用するのは必ずしも適当でないので、取引実態に即して、すなわち、地主にとって現実的な収入金額がない限り、その借地権取引によってその地主に所得が発生したと無理に考える必要はないであろう。」と述べて、通達の計算結果を否定し、 6000-6000=0 でよいとしています。
例外扱いでお茶を濁さず原理的再検討を
神は細部に宿るのであり、細部の事例に適用して、合理的な結果を得られない通達の考え方は、原理的に誤っているのだと思われます。
借地権と底地権が同一人に帰属したら、必ず混同処理しなければならない、と考えなくてもよいのではないでしょうか。借地権を底地から分離したら、それをそのまま維持しても、特に不都合はないように思われます。
一度、借地と底地に分離した事のある土地は、その記憶・記録が明確な限り、同一人に借地と底地が帰属することになった後でも、別々な財産として、取得費の計算をするものとする方が、合理的な気がします。